平成22年度 食育実践活動推進事業の取組内容

(株)ニチレイフーズの取組

開催概要

東京、福岡、千葉の3か所で、食事の宅配利用者や一般の方々を対象に、高齢者の食生活と健康について学んでいただくとともに、「食事バランスガイド」の活用等により「日本型食生活」を実践していただくため、食育に関する学習会を開催しました。
会場の参加者はいずれも熱心に講演を聴き、活発に質疑を行いました。また、東京会場の様子はNHKニュースでも放映されました。

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(株)ニチレイフーズ「食育学習会」
日 時 平成22年10月14日(木) 10:00~12:00
会 場 コープビル 東京都千代田区内神田1-1-12
参加者 食事の宅配利用者や一般の方 約50人
内 容
講義1: 高齢者の食生活と健康
講義2: 食事バランスガイドを使って健康に
主 催 おとどけシステム食育推進協議会
担 当 株式会社ニチレイフーズ、公益財団法人すこやか食生活協会
日 時 平成22年10月21日(木) 10:00~12:00
会 場 タカクラホテル福岡 福岡県福岡市中央区渡辺通2-7-21
参加者 食事の宅配利用者や一般の方 約30人
内 容
講義1: 高齢者の食生活と健康
講義2: 食事バランスガイドを使って健康に
主 催 おとどけシステム食育推進協議会
担 当 株式会社ニチレイフーズ、公益財団法人すこやか食生活協会
日 時 平成22年11月18日(木) 10:30~12:30
会 場 京北ホール 千葉県柏市柏1-4-3京北ビル
参加者 食事の宅配利用者や一般の方 約40人
内 容
講義1: 高齢者の食生活と健康
講義2: 食事バランスガイドを使って健康に
主 催 おとどけシステム食育推進協議会
担 当 株式会社ニチレイフーズ、公益財団法人すこやか食生活協会

講義内容

講義1:高齢者の食生活と健康

日 時 平成22年10月14日(木)・10月21日(木) 10:00~11:10・11月18日(木) 10:30~11:40
講 師 柴田博(人間総合科学大学大学院 教授、日本応用老年学会 理事長)

内 容

(1) 「高齢者の健康」は、「中年までの健康」とは異なり、少々病気にかかっていても、「生活機能における自立」があれば健康と考える。これは、WHO(世界保健機関)の提言で定義されている。
高齢者の能力を次のように7段階に分けるモデルがある。

高齢者の能力の7段階モデル(Lawton 1972)

高齢者の通常意識する生活機能は「身体的自立」である。一人で歩けるか、食べられるか、トイレに行けるか、衣服を脱いだりできるかということが指標になる。これをADL(activity of daily living)と言う。このレベルで人の世話にならなければ生活できない高齢者が「障害老人」または「要介護老人」ということになる。

(2) ADLの指標で障害がない大多数の人々の中にもいろいろな能力の段階がある。東京都老人総合研究所では、13段階に分けた「老研式活動能力指標」の物差しを作り、老人の健康診断に使っている。
1~5(緑)は、身体的能力を測定する指標で、手段的自立をしているかどうかを見る。6~9(赤)は、知的能動性(好奇心)があるかどうかを見る。10~13(青)は、社会的役割を果たす能力があるかどうかを見る。老化により、この指標の高い方から能力がだんだん落ちてくる。だから、高い段階でくい止めなければならない。

老研式活動能力指標
1.バスや電車を使って一人で外出できますか。 はい  いいえ
2.日用品の買い物ができますか。 はい  いいえ
3.自分で食事の用意ができますか。 はい  いいえ
4.請求書の支払ができますか。 はい  いいえ
5.銀行預金・郵便貯金の出し入れができますか。 はい  いいえ
6.年金などの書類が書けますか。 はい  いいえ
7.新聞を読んでいますか。 はい  いいえ
8.本や雑誌を読んでいますか。 はい  いいえ
9.健康についての記事や番組に関心がありますか。 はい  いいえ
10.友だちの家を訪ねることがありますか。 はい  いいえ
11.家族や友だちの相談に乗ることがありますか。 はい  いいえ
12.病人を見舞うことができますか。 はい  いいえ
13.若い人に自分から話しかけることがありますか。 はい  いいえ

(3) 老化防止のための食生活のあり方を考える場合に、食品摂取の多様性が高いほど長生きするという事実を重視する必要がある。そのような観点に立って、食品摂取の多様性の程度から食生活を評価する「食品摂取の多様性得点の算出方法」という評価法が考案された。それは、主食は毎日食べる物であるのでそれ以外の食品10品目のそれぞれについて毎日食べていると各1点、食べていない場合は0点として数える算出方法である。最大値は10点となる。

食品摂取の多様性得点の算出方法

秋田県で行った調査では、食品摂取の多様性得点が1~3点、4~8点、9~10点の3つのグループに分けて「老研式活動能力指標」による評価をしてみると、得点の低い人から生活機能が早く低下するということがわかった。
また、食品の多様性が保たれている人は、背景に単純な意味での食事からの栄養摂取だけではなく、対人交流、共食というような機会が多く、知的な刺激を受けているというようなこともある。

(4) コレステロールと3種類の病気による死亡率との関係を見ると、下表はハワイ日系人(男性)の調査であるが、コレステロール値が低いほど「がん」による死亡率が高く、逆に「心疾患」による死亡率はコレステロール値が高いほど高くなる。総じて長生きするのは、210~240ml/dl位の人ということがわかる。

年齢標準化血清コレステロール値別死亡率

(5) 低栄養予防の14ヶ条

1.3食をバランスよくとる
2.動物性たんぱく質を十分にとる
3.魚と肉の摂取は1:1の割合に
4.様々な種類の肉を食べる
5.油脂類を十分に摂取する
6.牛乳を毎日飲む
7.緑黄色野菜や根菜など多種類の野菜を食べる。火を通し、量を確保
8.食欲がないときはおかずを先に食べ、ごはんを残す
9.調理法や保存法に習熟する
10.酢、香辛料、香り野菜を十分に取り入れる
11.和風、中華、洋風と様々な料理を取り入れる
12.共食の機会を豊富につくる
13.かむ力を維持するため義歯は定期的に検査をうける
14.健康情報を積極的に取り入れる
柴田 博:「今日から実践 ! 安心食生活」(株)社会保険出版社2010

講義2:食事バランスガイドを使って健康に ~高齢者の食卓と「気くばり御膳」~

講 師 平成22年10月14日(木) 11:30~12:00 須田 久美子 ((株)ニチレイフーズ管理栄養士)
平成22年10月21日(木) 11:30~12:00 武永 早苗((株)ニチレイフーズ特販営業部長)
平成22年11月18日(木) 12:00~12:30 佐藤 祐子((株)ニチレイフーズ管理栄養士)

内 容

1.「日本型食生活」とは

近年、ライフスタイルの多様化などに伴い、食生活は大きく変化してきた。昭和40年度と平成17年度の食生活の変化を1人当たりの数値で比較してみると、米の消費量が減り、油脂・肉類などが増えて欧米型の食生活に移行している。そして、摂取エネルギー量が約2,200キロカロリーから約1,900キロカロリー*へと大きく減少している。平成17年度の栄養摂取状況を望ましい姿と比べてみると、摂取エネルギー量が不足しており、栄養バランス(PFCバランス)の面では、炭水化物の比率が低い一方、脂肪の比率が高く、バランスがとれていない。これに対し、昭和55年度の食事の栄養バランス(PFCバランス)は、ごはんを主食としてしっかり食べ、大豆、魚、野菜に肉類や牛乳・乳製品などの多様な副食が加わって栄養バランスのよい食生活が形成されていた。この頃の日本人の平均的な食生活を「日本型食生活」と呼んでいる。

「日本型食生活」とは

今後、栄養バランスに優れた「日本型食生活」を実践することが重要である。

*参考:国民健康・栄養調査

2.「食事バランスガイド」とは

1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいのかを「料理」で示している。厚生労働省・農林水産省により平成17年6月に策定された。

「食事バランスガイド」とは

1日に必要なエネルギー量と食事量の目安は、性別・年齢・身体活動量によって違う。

適量チェック!CHART

「食事バランスガイド」は1日ごとに数えるが、3~5日程度でバランスがとれればよい

3.「食事バランスガイド」の活用

(1) 高齢者世帯の食の営みパターン(二チレイフーズの生活者調査の結果より)

1)多品目の食材を食べている例
2)野菜は食べているが、脂質・たんぱく質などが少なく、バランスの悪い低栄養傾向の例
3)毎日同じメニューを続けて食べざるを得ない例
4)栄養不足を意識するあまり、サプリメントを多用する例
5)品目数が極端に少ない例
6)様々なストック状況の例

この調査結果からみて、食生活上の課題としては、第一に、食事を「用意(作る・購入)」できる能力を維持すること、第二に、何をどのように食べれば良いのかを理解し、実践すること、第三に、1人または2人暮らしで食べる量が少ない場合には、冷凍食品や市販の惣菜なども上手に活用して多品目の食材をとる工夫をすること、があげられる。

(2)「気くばり御膳」の栄養バランスを「食事バランスガイド」で確認

(株)ニチレイフーズの冷凍宅配弁当「気くばり御膳」(自家製ハンバーグのデミグラスソース仕立てセット)+ご飯200gを「食事バランスガイド」で確認すると、副菜もしっかりとることのできるバランスのよいお弁当ということがわかる。

「気くばり御膳」(自家製ハンバーグのデミグラスソース仕立てセット)+ご飯
■ 自家製ハンバーグのデミグラスソース 約80g、
  付け合わせ ほうれん草・人参・スイートコーン 約50g
■ オムレツ 約30g、付け合わせ なすのソテー 約20g
■ マッシュポテト 約20g・ブロッコリー 約20g
■ ご飯200g
( 主食2SV、副菜2SV、主菜3SV、エネルギー665kcal、食塩相当量2.3g )

(3) 「気くばり御膳」を取り入れた1日の食事例

高齢者の食卓にありがちな朝食(パン食)、昼食(麺類)の場合、夕食に「気くばり御膳」を取り入れると、副菜・主菜がしっかりとれてバランスのよい食事になる。

「気くばり御膳」を取り入れた食事例 (1)

「今日は作るのが面倒」「食事のバランスが偏っている」と感じたとき、気くばり御膳を昼や夜の食事に取り入れるだけで、1日の中で主食、副菜、主菜がきちんととれてバランスが良くなる。

「気くばり御膳」を取り入れた食事例 (2)

これに、果物や簡単に食べられる副菜(「選べるおかず」(単品惣菜))を追加するとさらにバランスが良くなる。

「副菜」を簡単・便利にプラスできる(株)ニチレイフーズ商品例「選べるおかず」(冷凍の単品惣菜)

「気くばり御膳」や「選べるおかず」(単品惣菜)などと組合せた場合を例にとって解説したが、このような組合せをバランスのよい食事を準備する際、参考にしてもらいたい。

「気くばり御膳」は、(株)ニチレイフーズの商標です。
写真提供: (株)ニチレイフーズ