講 師 | 清水 依理子 管理栄養士・健康運動指導士 |
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バランスのよい食事を実践するには、まず、自分や家族の食習慣を知ることが第1歩である。1日の食事のすべてを記録して、摂取量や日頃どのようなものを食べているのか知ることが大事である。
食品を選択する方法の1つに「四群点数法」*がある。これは、食品を栄養学的な特徴に基づいて4つの食品群に分類している。第1群は乳・乳製品、卵。第2群は魚介、肉、豆・豆製品。第3群は野菜、芋、果物。第4群は穀物、油脂、砂糖、その他。
そして、80kcalを1点として各食品群の個々の食品を点数化している。1日に20点(1,600kcal)を基本とし、第1群、第2群、第3群は3点ずつ、第4群は11点となるようにしてバランスよく食べると、身体に必要な栄養素を過不足なくとることができる。自分に必要な1日の点数は、身体活動レベル及び年齢・性別により異なる。
「四群点数法」を使い、健康維持のために何をどれだけ食べたらよいのか理解して自分の食事を見直し、過不足を調整する。
(*「四群点数法」は女子栄養大学の登録商標です。)
食品の購入前に、1人分の料理に必要な材料のグラム数と人数をかけて、1回に購入する量を把握しておく。買い物の場では、1袋、1束が何グラム入りかを確認し、加工品を買うときには、栄養成分表示も見るようにする。また、1回の購入分を、何日で食べきるか頭に入れて買う。
例えば卵であれば、2人家族で1日に2個消費する場合、10個入り1パックを購入すると、5日で1パックがなくなる計算になる。残っていれば、「今週は卵を食べなかった」という気付きも出てくる。
このように、1回1回の食事でどのくらい食べたか考えなくても、購入前に、食べきる日数と1人の食べる量を掛け合わせてから購入し、残らないように食べきると、バランスよく、そしてしっかり食べることができる。計画購入という形が栄養バランスをとっていく上でとても簡単な方法になる。
まず、我が家の食事の「くせ」「傾向」「特徴」を意識する。調理方法や肉の種類、肉と魚のバランス、緑黄色野菜・根菜を忘れていないか、海藻・きのこ、芋、果物、乳・乳製品、調味料はどうかと考えていくと、食事の特徴がわかってくる。次に、「四群点数法」を使って、同じ食品群の中で何を増やして、何を減らせばよいか、また、何と何を入れ替えられるだろうかを考えて献立をたてる。
食事はバランスも大切だが、おいしいことが一番である。旬の食材を使い、たくさんの種類を食べることを意識し、冷凍など保存法を工夫したり、電子レンジなどの調理器具を活用しておいしく食べよう。
誰にでもできる調理法「家庭版低温真空調理」を紹介する。
スーパーに置いてあるようなポリ袋と内容量3リットル以上の縦長の湯沸かし電気ポットを使用する。
まず、ポリ袋に食材と調味料を入れ、袋の中の空気を抜いてから口を結ぶ。空気を抜く方法は、ボウルなどに水を入れ、食材を入れた袋を食材の少し上の位置まで水に浸す。こうすると、水圧によって袋の中の空気が抜ける。袋の結び目はできるだけ袋の入口に近い上部にする。
次にポットに容量の約3分の1の水(3リットル容量のポットなら水1リットル)を入れ、電源を入れて沸騰させる。保温になったところで、先ほどの食材が入った袋を入れてポットのふたをし、温める。
鍋の役割をポリ袋が、湯煎器や加熱器の役割をポットがそれぞれ担っていて、湯沸かしポットの「湯」は100℃で沸騰し、98℃で保温となることを利用している。
この調理法の利点は、食材が空気にふれないので酸化しにくいこと、食材自体の旨味が閉じ込められておいしいこと、仕上がりがやわらかいが煮崩れしないことにある。また、調理未経験者でも作ることができる。数種類のおかずを同時に調理でき、1人前から作れるので少人数暮らしの生活支援になり、特別治療食や減塩・減脂食を他の家族のものと同時に調理することができる。また、電子レンジやオーブントースターなどと組み合わせて使用すれば、焦げ目をつけるなど料理の幅が広がる。
この手法のポイントは、①袋はマチのないものを選び、1袋1人前1品にすること、②加熱むらができないよう、ポットに入れる袋の数は3袋(1袋100~150g程度の場合)を目安にすること、③食材は厚さが均等になるように平らに入れること、④遊びの調味料がないので、調味液は最小量で薄味にし、食べる時に調整すること、⑤袋には油脂類の調味料は入れず、盛り付けてからかけること、⑥みりんやアルコール(酒、ワイン)は、一度電子レンジで加熱し、煮きるほうがよいこと、⑦アクがでる肉・魚は湯引きしたり、さっと水洗いしてから調理すること、⑧ポットの湯は飲用しない、蒸気に触れないこと、などである。
健全な食生活を送るためには、継続した暮らしの食事を大切にすることが必要である。毎日、毎食の栄養バランス完結型でなくてもよい。3日間、4日間、5日間の継続した日々の暮らしの食事で、帳尻を合わせるようにするとよい。