平成23年度 食育実践活動推進事業の取組内容

講義内容

高齢者の食生活と健康

講 師 柴田 博 人間総合科学大学 保健医療学部学部長・大学院教授

内 容

(1) 「高齢者の健康」は、「中年までの健康」とは異なり、少々病気にかかっていても、「生活機能における自立」があれば健康と考える。これは、WHO(世界保健機関)の提言で定義されている。高齢者の能力を次のように7段階に分けるモデルがある。

高齢者の能力の7段階モデル

高齢者の通常意識する生活機能は「身体的自立」である。一人で歩けるか、食べられるか、トイレに行けるか、衣服を脱いだりできるかということが指標になる。これをADL(activity of daily living)と言う。このレベルで人の世話にならなければ生活できない高齢者が「障害老人」または「要介護老人」ということになる。

(2) ADLの指標で障害がない大多数の人々の中にもいろいろな能力の段階がある。東京都老人総合研究所では、13段階に分けた「老研式活動能力指標」の物差しを作り、老人の健康診断に使っている。
1~5(緑)は、身体的能力を測定する指標で、手段的自立をしているかどうかを見る。6~9(赤)は、知的能動性(好奇心)があるかどうかを見る。10~13(青)は、社会的役割を果たす能力があるかどうかを見る。老化により、この指標の高い方から能力がだんだん落ちてくる。だから、高い段階でくい止めなければならない。

老研式活動能力指標
1.バスや電車を使って一人で外出できますか。 はい  いいえ
2.日用品の買い物ができますか。 はい  いいえ
3.自分で食事の用意ができますか。 はい  いいえ
4.請求書の支払ができますか。 はい  いいえ
5.銀行預金・郵便貯金の出し入れができますか。 はい  いいえ
6.年金などの書類が書けますか。 はい  いいえ
7.新聞を読んでいますか。 はい  いいえ
8.本や雑誌を読んでいますか。 はい  いいえ
9.健康についての記事や番組に関心がありますか。 はい  いいえ
10.友だちの家を訪ねることがありますか。 はい  いいえ
11.家族や友だちの相談に乗ることがありますか。 はい  いいえ
12.病人を見舞うことができますか。 はい  いいえ
13.若い人に自分から話しかけることがありますか。 はい  いいえ

(3) 老化防止のための食生活のあり方を考える場合に、食品摂取の多様性が高いほど長生きするという事実を重視する必要がある。そのような観点に立って、食品摂取の多様性の程度から食生活を評価する「食品摂取の多様性得点の算出方法」という評価法が考案された。それは、主食は毎日食べる物であるので、それ以外の食品10品目のそれぞれについて毎日食べていると各1点、食べていない場合は0点として数える算出方法である。最大値は10点となる。

食品摂取の多様性得点の算出方法

秋田県で行った調査では、食品摂取の多様性得点が1~3点、4~8点、9~10点の3つのグループに分けて「老研式活動能力指標」による評価をしてみると、得点の低い人から生活機能が早く低下するということがわかった。
また、食品の多様性が保たれている人は、背景に単純な意味での食事からの栄養摂取だけではなく、対人交流、共食というような機会が多く、知的な刺激を受けているというようなこともある。

(4) コレステロールと3種類の病気による死亡率との関係を見ると、下表はハワイ日系人(男性)の調査であるが、コレステロール値が低いほど「がん」による死亡率が高く、逆に「心疾患」による死亡率はコレステロール値が高いほど高くなる。総じて長生きするのは、210~240ml/dl位の人ということがわかる。

年齢標準化血清コレステロール値別死亡率

(5) 低栄養予防の食生活指針14ヶ条

1.3食のバランスをよくとり、欠食は避ける
2.動物性たんぱく質を十分にとる
3.魚と肉の摂取は1対1の割合に
4.様々な種類の肉を食べる
5.油脂類を十分に摂取する
6.牛乳を毎日飲む
7.緑黄色野菜や根野菜など多種類の野菜を食べる。火を通し、量を確保
8.食欲がない時は、おかずを先に食べ、ごはんを残す
9.調理法や保存法に習熟する
10.酢、香辛料、香り野菜を十分に取り入れる
11.和風、中華、洋風と様々な料理を取り入れる
12.共食の機会を豊富につくる
13.かむ力を維持するため、義歯は定期的に検査をうける
14.健康情報を積極的に取り入れる
出典:生活・福祉環境づくり21・日本応用老年学会
高齢社会の「生・活(いきいき)」事典, 社会保険出版社, 2011