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第3章 野菜の栄養素と機能性成分 後編

2.野菜に含まれる機能性成分

私たちは毎日食事をすることで、さまざまな成分を摂取しています。それらの中で、老化防止、発ガンの抑制、高血圧の予防、免疫力の向上などに効果のある成分を機能性成分と呼んでいます。

野菜に含まれる機能性成分の種類です。

●食物繊維
食物繊維は、かつて、栄養的には価値のないものとされていました。しかし、近年は健康維持に必要であることがわかり、その重要性が注目されています。 食物繊維の効果としては、(1)コレステロールや脂質の吸収を抑制、排出を促進することによる血中コレステロールの低下、(2)糖分の吸収を遅らせることによる糖尿病の予防、(3)咀嚼回数の増加や胃の中で体積が増えることによる食べ過ぎの防止、(4)腸内細菌のバランスを整え、腸の働きを活発にして便通をよくし、大腸ガンを予防する、などがあります。
食物繊維を豊富に含む野菜は、エシャロット、とうがらし、グリーンピースなどです。
●ポリフェノール
ポリフェノールは、野菜や果実に含まれる色素成分であるアントシアニンやフラボノイド、種の中の渋み成分であるタンニンやカテキン等です。
もともと植物が厳しい環境や外敵から身を守る生体防御のために作り出した物質なので、抗菌作用があります。また、強い抗酸化作用があり、発ガンを抑制する効果や、老化防止、毛細血管を丈夫にする作用、抗アレルギー作用などが報告されています。
また、えぐ味や独特の風味など、野菜の味にも関与しており、含有量は野菜によって異なりますが、ほとんどの野菜に含まれています。
アントシアニンは、野菜では、赤じそ、紫キャベツ、なす、すいか、紫色のさつまいもなどに含まれています。目の機能の向上、眼精疲労の回復に効果があるほか、強い抗酸化作用により、ガンなどの生活習慣病を予防する効果が期待されます。
フラボノイドは、野菜では、たまねぎ、ブロッコリー、食用菊などに含まれています。体内にはわずかしか吸収されませんが、ごく少量で、活性酸素の働きを抑制し、動脈硬化やガンの発生を抑制する効果が期待されます。
●アスコルビン酸(ビタミンC)
アスコルビン酸(ビタミンC)は、栄養素として働くほかに、機能性成分としての働きも持っています。強い抗酸化作用があり、胃ガンや肝臓ガンの原因の一つであるニトロソアミンの生成を抑制し、反対に、インターフェロンという抗ガン物質の生成を促進します。
●カロテノイド
カロテノイドは、主に植物に含まれる黄色、赤色などの色素で、600種類近くもあります。抗酸化作用のある成分で、体内で発生する活性酸素を除去する生体防御作用の役割の一端を担っています。また、その作用によって、ある種のガンを予防をする働きが注目されています。
カロテノイドの仲間
●α‐カロテン・β‐カロテン
にんじん、ほうれんそう、ブロッコリー、かぼちゃなどに含まれています。
●γ‐カロテン
トマト、あんずなどに含まれています。
●リコペン
トマト、すいかなどに含まれています。
●アスタキサンチン
えび、かに、いくらなどに含まれています。
●カプサンチン
ピーマンなどに含まれています。
●カプサイシン
赤とうがらしなどに含まれています。
●ゼアキサンチン
マンゴー、パパイア、ほうれんそうなどに含まれています。
●β‐クリプトキサンチン
とうもろこし、ぽんかん、みかんなどに含まれています。
●ルテイン
ほうれんそう、とうもろこし、卵黄などに含まれています。
●イオウ化合物
強い抗酸化力を持ち、活性酸素を除去し、解毒作用を発揮して、ガンの発生を抑えます。
イオウ化合物には、硫化アリル、イソチオシアン酸類などがあります。
硫化アリルは、血液をサラサラにして動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病を予防します。たまねぎ、ねぎ、にら、にんにく、らっきょうなどのユリ科の野菜に含まれます。
イソチオシアン酸類は、異常のある細胞が増えるのを抑え、ガン化を抑制する働きがあります。キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどのアブラナ科の野菜に多く含まれています。中でもキャベツに含まれるイソチオシアネートは有名です。
●クロロフィル
植物などに含まれる緑色の色素で、葉緑素ともいいます。カロテノイドとともに働いて、ガン予防に効果的だといわれています。またコレステロール値を下げる効果や、貧血予防、炎症鎮静作用なども期待できます。
ほうれんそう、にら、ピーマンなどの緑黄色野菜に多く含まれています。

このように、野菜は、私たちの健康にとってとても重要な食べ物であり、国内農業においても重要な作物といえます。野菜の国内の生産額は、農業全体の1/4を占めますが、近年、生産農家の高齢化などで、作付面積や生産量は減少し、海外からの輸入も多くなっています。

野菜をしっかり食べて、ビタミン、ミネラル、機能性成分をたっぷりとりましょう。

3.野菜の生産について

野菜の生産は、国内農業の生産額の4分の1を占めています。平成14年の国内生産量は、1327万トン、食料需給表に基づく国内1人当たりの消費量は、年間97kgとなっています。

野菜は、水分が90%以上あり、収穫後も呼吸・代謝を活発に行います。また、収穫に伴うストレスで植物ホルモンのエチレンが生成され、そのまま放置すれば鮮度が低下し、腐敗してしまいます。このため、一般に収穫後は、呼吸によって発生する熱による温度上昇などを抑え、鮮度を保持するため、産地で冷却して出荷しています。これを予冷といいます。特に夏場の高温時や貯蔵性の低い葉物野菜、果菜類では重要です。また輸送も低温を保つ保冷車で行われたり、卸売市場や小売店では低温保管施設が整備されているところも多くあります。これをコールドチェーンシステムといいます。

一方、たまねぎ、じゃがいも、にんじんなどでは比較的長期間貯蔵が行われる場合もあります。その場合の貯蔵方法としても、代謝の抑制などのため、低温貯蔵が一般的に行われています。

つぎにおもな野菜の大産地についてご紹介します。

じゃがいも、だいこん、にんじん、たまねぎは北海道。さといも、ほうれんそう、ねぎは千葉県。はくさいは茨城県。きゅうりは群馬県。レタスは長野県。キャベツは愛知県。なすは高知県。トマトは熊本県。ピーマンは宮崎県などとなります。

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制作/(財)すこやか食生活協会