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第2章 食肉がはたしている役割 後編

2.食肉の摂取が病気のリスクを減らす

食肉に含まれている成分は、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、ガン、感染症などのリスクを下げる効果があることがわかっています。また骨密度を高める効果もあるといわれています。さらに、コレステロール値の改善やうつ病予防への効果に対する研究も盛んに行われており、特に脳の血管を強くすることに効果があることが認められています。

ところで、脳卒中は、栄養状態がそこそこ進んだ国に多発する病気といわれています。日本でも、栄養状態が劣悪だった1950年までは、死亡率のトップは結核でした。その後、高度経済成長を経て、栄養面でも先進国の仲間入りをすると、死亡率のトップは、脳卒中になりました。この経過は、アメリカやヨーロッパでも同じでした。日本では、1960年あたりまで、脳卒中は、高血圧とともに高コレステロールが原因であると考えられていました。その後、疫学的な調査が進み、脳卒中は、むしろコレステロールが低い食生活を送っている人に多いことがわかりました。そして、さまざまな調査・研究が行われ、脳卒中には「動物性たんぱく質や脂質が不足した状態の低栄養」それと「高血圧」が関連していることがわかったのです。

ところで、高血圧は、脳卒中の重要な危険因子ですが、動物性たんぱく質に含まれている物質には、血圧の上昇を抑える働きがあることが、さまざまな研究でわかっています。毎日の食事において、動物性たんぱく質を摂取するように心がけることで、脳卒中発症の危険性を少なくすることができます。

ところで、ガンとの関係について、長い間、脂肪の摂取とガン発症の間には、相関関係があるのではないかといわれてきました。しかし、1993年にローマで開かれたWHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の合同会議で行われた精度の高い疫学研究報告では、従来と異なる結果が報告されました。合同会議では、アメリカから、乳ガンと動物性脂肪摂取の間には、まったく相関関係がみられないという調査結果が紹介されました。また日本でも、5年刻みで動物性脂肪摂取量とガン発症の関連を調べていますが、同様の結果が示されています。さらに、アメリカには、脂肪摂取量が多いほど、大腸ガンの発症リスクが高いという報告がありますが、日本の疫学調査では、かならずしも大腸ガンの増加につながるとはいえないという報告があります。現在では、大腸ガンの発症原因は、むしろ食物繊維の摂取量の減少が問題ではないかとする見解が支配的です。

コレステロールとガンの関係については、さまざまな医学調査が行われていますが、コレステロール値が高いほどガンにかかりにくいと報告されています。また、動物性食品が不足すると血清コレステロール値が低くなり、ガンの抑制に効果があるとされる脂に溶けるビタミンAやEも不足してしまうのも事実です。

次に痛風についてですが、この10年間で、痛風患者は50万人と2倍に増えました。その多くは、中年男性です。痛風は、遺伝的要因に加えて、食事やストレス、飲酒などが誘発する病気といわれていますが、代謝障害による高尿酸血症が原因で発症します。これまでは、食肉、卵、いくらなどプリン体を多く含む食品のとり過ぎが原因といわれていました。そのため、つい最近までは、肉類などを抑え、野菜をたっぷりとるという食事指導が行われていました。しかし現在では、痛風の原因はアルコール類の飲み過ぎ、激しい有酸素運動などの筋肉運動、精神的ストレスが有力なリスク要因と認識されています。つまり、痛風には、食肉はあまり関係ないことがわかっています。

3.食肉の生産について

牛肉、豚肉、鶏肉の平成18年度の生産量をくらべてみると、鶏肉が最も多く134万トン、ついで豚肉が87万4千トン、牛肉が34万6千トンとなっています。加工仕向けや業務用、外食をのぞいた家計での消費量は、1人当たり、豚肉が最も多く5517g、ついで鶏肉が3844g、牛肉が2192gとなっています。

製造工程についてご紹介します。牛肉や豚肉は、牧場・養豚場から食肉センターに運ばれ、さまざまな検査を受けた後、と畜・解体、肉の格付けをされ、食肉市場でセリにかけられ、その後加工されてレストランやお肉屋さんに運ばれていきます。鶏肉は、養鶏場から食鳥処理場に運ばれ、1羽ごとにと体や内臓を調べて病気ではないかがチェックされた後、処理・加工されてレストランやお肉屋さんに運ばれていきます。

牛肉には、9つの部位があります。かた、かたロース、リブロース、サーロイン、ヒレ、ともばら、うちもも、らんぷです。部位の特性がはっきりしているので、持ち味を活かして調理できます。またヘム鉄が多く含まれるので、貧血防止に役立ちます。

豚肉には、7つの部位があります。かた、かたロース、ロース、ヒレ、ばら、もも、そとももです。どの部位もさまざまな料理に利用することができます。ビタミンB1が豊富なので、疲労の回復に役立ちます。

鶏肉には、5つの部位があります。手羽、むね、もも、ささみ、かわです。牛肉や豚肉と比べてあっさりした味で、皮をのぞくと低脂肪、低エネルギーで、たんぱく質を多く含みます。また、消化がよく、レチノールというビタミンAが豊富で、皮膚や粘膜を丈夫にし、肌をきれいにして、抵抗力を高める働きがあります。

ブランドとしては、財団法人日本食肉消費総合センターの平成17年3月の調査によると、牛肉は、北海道に47銘柄あって最も多く、ついで岩手県が18銘柄。豚肉は、群馬県が28銘柄、ついで北海道が23銘柄となっています。

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制作/(財)すこやか食生活協会